SIerとは?システムインテグレーターを9年経験者が徹底解説【SIerはいいぞ】

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SIerとは?
SIer未経験者

SIerへの転職に興味があるけど、落ち目の業界と言われているし実際どうなんだろう…

SIerって結局どんな仕事をしているのか?将来性あるのか?外からはわかりにくいですよね。外部から批判されがちな業界なので、ネガティブなイメージを持っている方も多いのではと思います。

SIerを批判するコンテンツの例
出典 YouTube ひろゆきの回答
出典 YouTube しまぶーのIT大学

この記事では、新卒から約9年間SIerで働いてきた筆者がSIerのビジネスモデルから将来性・年収・残業事情まで実体験をもとに解説します。

この記事を読めば、SIerの全体像を把握して今後の就職活動等の参考にすることができます。

この記事の結論

SIerのビジネスはこの先絶対になくならない。教育体制や年収水準も良いため、実はSIerはねらい目な業界。

この記事を書いた人
IT営業経験者

IT業界勤務 ヒロマン

  • 10年間IT業界に勤務し、IT企業3社にて営業と企画開発を経験。
  • 長時間労働・顧客からのクレーム対応役といった高ストレス業務に耐えながら2回の転職を経験。
  • 現在はIT業界で仕事を楽しみながら毎日9-18時勤務で年収800万の生活中。

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目次

SIer(システムインテグレーター)とは

SIer(システムインテグレーター)とは一言でいうと、『企業が抱える課題を、ITを活用して解決するIT企業』です。

企業が抱える課題の例
  • スマートフォンアプリを作って自社の製品をもっと顧客にアピールしたい
  • 社内の煩雑な業務をシステムで自動化して業務を効率化したい
  • 顧客のデータを収集して分析し、売上アップに活かしたい

IT業界以外の業界に属する企業は、ITに関する専門知識を保有している訳ではありません。そのため、自社単独でITによる課題解決を進めるのは実は非常に難しいのです。

IT業界以外の企業が自社の業務で使うシステムを作る場合…
非IT企業の社員

どうやったらシステムを作れるの?

どんなITエンジニアを雇ったらいいの?

そこでSIerの出番です。SIerは企業から注文を受けて、システムを開発するといったITによる課題解決を代行します。

参考

SIerの読み方は「エスアイアー」「エスアイヤー」が通称です。

SIerとSESは異なる

SIerと似た言葉にSES(システムエンジニアリングサービス)があります。

SES(システムエンジニアリングサービス)とは

ITエンジニアの労働力を企業向けに提供する事業を指します。SESを主事業として展開している企業は「SES企業」と呼ばれます。

SESとSIerは異なります。SESは自社のITエンジニアの労働力を提供する事業であり、自社がシステム開発を請け負うことはありません。一方で、SIerはシステム開発事業も含みます。

家作りにたとえるなら、家を建てたい人と契約して家づくりに責任を持つハウスメーカーがIT業界でいうSIerに該当します。大工さん数人を派遣して家づくり作業の一部を手伝うのがIT業界でいうSESです。

SES企業はシステム開発を請け負うことはせずSIer事業はやりません。一方でSIer企業はSESも事業として展開しているケースがほとんどです。

SIerの事業

SIerはシステム開発するだけではありません。SIerの事業は大きく分けると以下の3つです。

  • システム開発
  • エンジニアの労働力提供(SES)
  • システム開発/運用に必要な製品販売

以下、順に解説します。

 SIerのビジネス①システム開発

SIerの事業の中で最も代表的なのが企業向けのシステム開発です。

参考

世の中に存在するIT技術をインテグレート(和訳:統合)してシステムを作るという役割から、システムインテグレーターという名称がつけられています。

IT業界以外の企業はITの専門家ではないため、自社単独でシステムを開発するのは非常に難しいです。そこで、SIerが企業のシステム開発を代行します。

企業活動には、業務用の情報システムが必要

SIer未経験者

企業のシステムって何ですか…?

一言でいうなら、企業が業務で使うアプリです。

たとえば、個人が使うパソコンやスマートフォンには、用途に応じて色んなアプリが入っていますよね。

用途用途に応じて使うアプリ
メールを使いたいGmail
動画を見たいYouTube
SNSを使いたいInstagram、Twitter
個人向けアプリの例
用途用途に応じて使うアプリ
メールを使いたいGmail
動画を見たいYouTube
SNSを使いたいInstagram、Twitter
個人向けアプリの例

同様に、企業活動においても社員は用途に応じて様々な業務用アプリをパソコンやスマートフォンで使って業務を進めています。企業が使う場合は「アプリ」ではなく「システム」と呼ぶことが一般的です。

用途用途に応じて使うシステム
効率的に営業活動したい営業管理システム
在庫がどれくらいあるか見える化したい在庫管理システム
社員の勤務状況を適切に管理したい勤怠管理システム
企業向けアプリの例
用途用途に応じて使うシステム
効率的に営業活動したい営業管理システム
在庫がどれくらいあるか見える化したい在庫管理システム
社員の勤務状況を適切に管理したい勤怠管理システム
企業向けアプリの例

現代において、企業がシステムを一切使わずに業務を営むのは非現実的です。システムを使わずに業務を進めるということは、紙・ペン・電話だけで事業を営むことを意味します。

参考

企業以外の以下の法人機関もシステムを使って業務を進めています。

  • 内閣府・官公庁
  • 地方公共団体
  • 学校法人
  • 病院

SIerは企業以外に上記の法人機関からもシステム開発を請け負っています

SIerのシステム開発は企業向けのみ。個人向けビジネスはなし

SIer未経験者

企業向け以外に、個人向けにシステム開発はしないのですか?

SIerの取引相手は全て企業です。個人=一般消費者向けの事業はやっていません。SIerがシステム開発において顧客企業から受注する額は「安くて数千万」という規模です。一般消費者が払える額ではありませんし、一般消費者はそんな大金を払って自分専用のシステムを作りたいというニーズもありません。

参考:SIerが作ったシステムを消費者が使うことはある

SIerの取引相手は企業向ですが、SIerが作ったシステムを消費者個人が使うことはあります。

  1. 一般消費者向けにアプリを提供したい小売企業が、自社ではアプリを開発できないのでSIerに開発依頼するとします。
  2. SIerはアプリの開発費用を小売企業からもらいます。
  3. 小売企業はSIerに開発してもらったアプリを世の中に提供し、消費者個人が利用します。

 SIerのビジネス②エンジニアの労働力を提供して顧客を手伝うSES事業

SIerはシステム開発を請け負うだけでなく、自社のエンジニアの労働力を顧客企業に提供するSES事業も展開しています。

SES(システムエンジニアリングサービス)とは

ITエンジニアの労働力を企業向けに提供する事業を指します。業務委託と言われることもあります。

システム開発とは何が違うのですか…?

SIer未経験者

システム開発とは何が違うのですか…?

システム開発SES
ビジネスモデル顧客向けにシステムを開発/納品して代金をもらうエンジニアの労働力を顧客へ提供して代金をもらう
契約パターン例営業管理システム開発費用一式:3億円ITエンジニア×1名×1か月分費用:150万円
システム開発とSESの違い
システム開発SES
ビジネスモデル顧客向けにシステムを開発/納品して代金をもらうエンジニアの労働力を顧客へ提供して代金をもらう
契約パターン例営業管理システム開発費用一式:3億円ITエンジニア×1名×1か月分費用:150万円
システム開発とSESの違い

SESはあくまでも「エンジニアの労働力を顧客企業へ提供して顧客を手伝う」形なので、システムを開発する責任はありません。

SIer未経験者

システム開発ではなくでエンジニアの労働力だけ提供するケースってどんな時ですか…?

SIerがSESを提供するケース①開発したシステムの保守

実は、システムは開発したらそれで全て終わりではありません。開発した後、正しく動き続けるようメンテナンスする必要があります。

企業がSIerに開発してもらったシステムを自社だけでメンテナンスするのは難しいです。なぜならば、SIerにシステム開発してもらう企業はITの専門知識がないからです。

SIerに開発してもらったシステムのメンテナンスは、開発したSIerにお願いすることが定石です。SIerは顧客企業と「システム保守契約」という契約を締結し、システムのメンテナンスに必要なエンジニアの労働力を提供します。

SIerがSESを提供するケース②企業が自社でシステム開発する際の支援

ひと昔前は、IT業界以外の企業にはIT知識がないため、システム開発はSIerにお願いするのが常識でした。しかし近年では、IT業界以外の企業もITに関する知見を高めて自社でシステム開発するケースが増えています。

日清食品、自前でアプリ開発

日清食品ホールディングス(HD)が簡単なプログラミングで済むツールを活用し、システムやアプリの内製化を進めている。決裁書類の電子化システムなどを現場がニーズに合わせて次々と自作し、その数は2年間で350種類を超えた。

日本経済新聞 2022年7月20日

ただし、システム開発に必要な人手を全て自社で賄いきるのは以下を理由に難易度が高いです。

システムの自社開発を全て自社の
社員だけでやりきるのは難しい理由
  • エンジニア市場は超売り手市場で、そう簡単には雇えない
  • 日本では解雇規制により一度雇ってしまうとそう簡単には解雇できず固定人件費が増えるリスクがあるため、不用意にエンジニアを増やせない

そこで、システムを自社開発する企業は、足りないエンンジニアを補うためにSIerからSESの支援を受けるのです。

 SIerのビジネス③システム開発/運用に必要な製品販売

SIerは「ITエンジニアがシステムを開発する」イメージを持たれがちですが、実は製品販売ビジネスも主力事業として営んでいます。

SIer未経験者

ITの世界で販売する製品って何ですか…?ITスキルさえあればシステムは作れるのではないでしょうか?

必要な全ての技術スキルを完璧にそろえて全てを自社で作れば、製品を購入しなくても済みます。しかし、全てを自前で作るのは作業やコスト的にも非現実的です。たとえば、業務で使うPCはイチから自分で開発するよりも、PCメーカーから購入した方が遥かに安くて速いです。

具体的には以下は外部の製品を活用することが多いです。

外部製品を活用する例
  • システムを動かすための物理的なコンピュータ環境(サーバーなどのハードウェア)
  • サーバーと利用者のパソコンとを繋げる回線
  • OS(個人のパソコンでいうWindowsやiOS)
  • データベースを作るためのソフト
  • 外部からの攻撃を防御するセキュリティソフト

企業はシステムを作るために必要なパーツとして上記を購入するのですが、この販売にもSIerは関わってきます。SIerが販売する製品と販売方法は以下のパターンに別れます。

販売する製品自社製品の販売
販売代理店として他社製品を販売
販売方法自社のシステム開発提案に含めて提案
単発で販売
SIerによる製品販売
販売する製品自社製品の販売
販売代理店として他社製品を販売
販売方法自社のシステム開発提案に含めて提案
単発で販売
SIerによる製品販売

以下、順に解説します。

SIerが自社開発した製品を販売

SIerの役割は以下の3つと解説しました。

  • システム開発
  • SES
  • 製品販売

一方で、1つの企業がSIerの役割とは他に、製品を開発するメーカーとしての事業を展開しているケースもあります。

SIer企業SIer以外のメーカーとしての事業
富士通サーバー、パソコンの生産
日立ストレージ、監視用ソフトウェアの生産
オービック経営管理ソフトウェアの生産
SIer企業がメーカー事業も展開するケース
SIer企業SIer以外のメーカーとしての事業
富士通サーバー、パソコンの生産
日立ストレージ、監視用ソフトウェアの生産
オービック経営管理ソフトウェアの生産
SIer企業がメーカー事業も展開するケース

SIerがメーカーとして自社製品を開発している場合は、SIerとしてその製品を企業へ販売する事業も手掛けています。

SIerが他社製品を代理店として販売

SIerは自社以外の企業が開発した製品を販売代理店として販売するケースが非常に多いです。製品を開発したメーカーとSIerが販売代理店契約を締結し販売する権利を獲得した上で販売します。

SIer未経験者

他社製品を売って何のメリットがあるのですか?

自社以外の第三者の製品を販売する事業には以下のメリットがあります。

SIerが第三者の製品を販売するメリット
  • 販売手数料が得られる
  • エンジニアの人数に依存せずに売上を稼げる

もしもSIerが製品販売事業をしないなら、売上は全て自社のエンジニアの人数に依存してしまいます。なぜならば、システム開発やSESでは絶対にエンジニアが必要だからです。言い換えると、エンジニアの人数が増えなければ売上の成長も止まってしまいます。

一方で、製品販売ビジネスでは絶対にエンジニアが必要な訳ではありません。販売できる体制さえ整えてしまえば、後は製品が売れれば売上を獲得できます。

自社のエンジニアの人数に依存せずに売上を獲得するためには、他社製品の販売はSIerにとって非常に重要です。

参考:メーカーにとってもSIerが販売代理店になると嬉しい

製品を開発するメーカーにとっても、SIerが販売代理店になってくれるのはメリットがあります。なぜならば、日本企業のほとんどは必ずどこかのSIerと取引関係があるからです。自社でイチから見込み顧客を探すよりも、SIerが販売代理店担ってくれた方が集客力も製品購入に至る可能性も高まるのです。

販売方法①自社のシステム開発提案に含めて提案

SIerのシステム開発提案の中には、そのシステムを作るための部品となる外部製品も含まれます。たとえばシステム開発提案の見積は以下の構成になっています。

分類項目単価数量金額
システム開発作業要件定義4,000,000円1式4,000,000円
詳細設計6,000,000円1式6,000,000円
開発/テスト18,000,000円1式18,,000,000円
製品サーバー1,500,000円4台6,000,000円
データベース製品3,000,000円2個6,000,000円
監視ソフト製品1,200,000円4個4,800,000円
セキュリティ製品3,000,000円1個3,000,000円
合計47,800,000円
SIerが作成するシステム開発の見積例
分類項目単価数量金額
システム開発作業要件定義4,000,000円1式4,000,000円
詳細設計6,000,000円1式6,000,000円
開発/テスト18,000,000円1式18,,000,000円
製品サーバー1,500,000円4台6,000,000円
データベース製品3,000,000円2個6,000,000円
監視ソフト製品1,200,000円4個4,800,000円
セキュリティ製品3,000,000円1個3,000,000円
合計47,800,000円
SIerが作成するシステム開発の見積例

SIerはシステム開発を顧客から受注できれば、自動的に製品も受注できるのです。SIerは外部メーカーから製品を仕入れ利益をのせて顧客に販売するため、製品販売において利益も獲得できます。

SIerから提案を受ける顧客

SIerに利益をのせられるのは嫌ですね。メーカーから直接購入すればSIerの利益分をカットして安く購入できるのでは?

「製品は直接メーカーから購入して、システム開発作業だけSIerに依頼する」手法は、以下を理由にIT業界ではありえません。

理由①システム開発に必要な製品は、そのシステムを作るSIerから購入するのが業界のルールだから

SIerの役割である「システムを作ること」の中には、「システムを作るために必要な製品を選び調達すること」も含まれています。製品の購入にSIerを挟まないと、システム開発に支障をきたします。

たとえるなら、レストランで料理を注文する際に「食材は私が直接購入するので、それを料理してください」と依頼するようなものです。

理由②直接メーカーから購入する方が高くなる

実は各製品メーカーは「値引き率」を用いて、システムを使用する企業向けに製品販売する時よりもSIerへ販売する時の方が金額を安くしています。

製品定価販売先値引率値引き率を反映した
実際の販売価格
セキュリティ製品3,000,000円製品を実際に使う企業へシステム開発を提案するSIer40%1,800,000円
製品を実際に使う企業なし3,000,000円
製品メーカーの販売価格
製品定価販売先値引率値引き率を反映した
実際の販売価格
セキュリティ製品3,000,000円製品を実際に使う企業へシステム開発を提案するSIer40%1,800,000円
製品を実際に使う企業なし3,000,000円
製品メーカーの販売価格

そのため、たとえSIerが利益を乗せていたとしてもSIerから購入した方が安く購入できるのです。

SIerから提案を受ける顧客

なぜ製品メーカーはSIer向けの方が安く販売するのですか?

製品メーカーの立場からすると、IT知識・スキルに乏しい企業へ直接販売するよりもITの専門家であるSIerへ販売する方が遥かに楽だからです。

IT知識・スキルに乏しい企業へ直接販売すると、質問・問い合わせが多発して製品メーカーは疲弊します。一方で、ITの専門家であるSIerへ販売する場合はレベルの低い質問や問い合わせは受けずに済むのです。以上をふまえ、製品メーカーにとってはSIerへ販売した方がメリットが大きいため、SIer向けの方が金額を安くしています。

販売方法②システム開発はせずに製品単体で販売

システム開発はしないけど、SIerが製品を販売代理店として単体で販売するパターンも多いです。製品の販売代理店であるSIerが、別途システム開発を提案している別のSIerへ製品を販売するケースが多々あります。

実は同業他社のSIer同士で取引関係があることは珍しくありません。「ある事業部では競合他社に該当するSIerが、別の事業部では仲のいい取引先」という構図はよくあります。

SIer未経験者

システム開発するSIerはなぜわざわざ販売代理店のSIerから製品を購入するのですか?自社が販売代理店になった方が利益を稼げるのでは?

実は、外部製品の販売代理店になるのは簡単ではありません。製品メーカーとの販売代理店契約を締結する必要がありますが、以下のような条項が盛り込まれがちです。

製品メーカーとの販売代理店に盛り込まれる条項の例
  • 競合他社製品の販売代理店になってはならない
  • 本製品に詳しい担当者を社内に設置しなければならない
  • 本製品に詳しい社内勉強会を定期的に実施しなければならない

上記を会社として受け入れるか否かは慎重な判断が必要です。単純に「直近のシステム提案で製品を盛り込みたいから」という理由だけでは、会社から販売代理店契約の締結は承認されません。自社が販売代理店になるよりも、既に販売代理店になっている他のSIerから購入した方が遥かに手っ取り早いのです。

参考:販売代理店にもランクがある

製品メーカーの販売代理店には、その役割に応じてランクが設けられるケースが多いです。販売代理店の役割が大きいほど、製品メーカーが販売代理店に提供する値引き率も高くなります。

販売代理店ランク販売代理店がやること製品メーカーが販売代理店に
提供する値引き率
販売とりつぎ・販売代理店の営業社員による製品販売
販売とりつぎ&問い合わせ対応・販売代理店の営業社員による製品販売
・システム利用者からの製品に関する問い合わせ対応
販売代理店のランク 例
販売代理店
ランク
販売代理店がやること製品メーカーが販売代理店に
提供する値引き率
販売とりつぎ・販売代理店の営業社員による製品販売
販売とりつぎ&問い合わせ対応・販売代理店の営業社員による製品販売
・システム利用者からの製品に関する問い合わせ対応
販売代理店のランク 例

販売だけでなく問い合わせ対応もする場合、その製品について詳しいエンジニアを社内に配置し、常に顧客からの問い合わせに対応できる体制を整備する必要がありコストがかかります。そのリターンとして高い値引き率を受けられるのです。SIerは「この製品は売れそう」「当社が抱える顧客と相性がよさそう」と判断すると、問い合わせ対応も含めた販売代理店契約を締結し、売上・利益を求めて積極的に製品販売へ打ってでます。

特に、本社が海外にある外資系の製品メーカーは日本市場での事業展開において言語の壁が大きいため、問い合わせ対応もしてくれる販売代理店を積極的に増やす傾向があります。

SIer不要論・オワコン説は見当違い

ネット上では「SIerは要らない」「SIerはオワコン」といった意見・記事を度々目にします。

SIerを批判するコンテンツの例
出典 YouTube ひろゆきの回答
出典 YouTube しまぶーのIT大学

SIer不要論の代表的な理由は以下です。

SIerは不要・オワコンと言われる理由
  • 企業がシステムを自社で開発するのが主流の時代になりつつあり、企業のシステム開発を請け負うSIerは社会から要らなくなる
  • クラウドサービス等、既にシステムとして出来上がっている仕組みを活用すればSIerにシステムを開発してもらう必要はなくなる

一見正しいようにも聞こえますが、SIerで働いてきた身からすると「だからSIerは不要になる」という意見は全くの見当違いです。以下、それぞれに対する反対意見を解説します。

システムを自社開発する企業が増えてもSIerは残り続ける

近年では企業がシステムを自社開発するケースが増えています。

企業がシステムを自社で開発する背景
  • ビジネスにおけるIT戦略の重要性が高まっており、IT企業でなくてもエンジニアやIT戦略に強い人材を社員として採用している
  • ノーコード・ローコード技術等、深いIT知識がなくてもシステムを作れる技術が対等している
ノーコード・ローコードとは

システム開発において新たな手法として広まっている開発手法です。ノーコードはプログラミングに関する専門知識がいっさい不要で開発できます。ローコードは従来と比較して圧倒的に少ないプログラムミング作業量でシステムを開発できます。

ただし、「自社開発が増えるからSIerは要らなくなる」という意見は全くの暴論です。なぜならば、企業はシステムを自社開発するとしても、全てを自社の社員だけでやりきることはできずSIerからの支援を必要とするからです。

日本では解雇規制を理由にシステムを全て自社で開発するのは難しい

システムとは、最初から最後まで常に一定の人数で進めるものではありません。システム開発のフェーズに応じて必要な人手が変わるからです。

順番工程具体的作業内容必要な人数
1要件定義顧客の課題を解決するために、何ができるシステムを作るのか(=要件)を定義する。技術だけでなく顧客のビジネスも理解でき、顧客とのコミュニケーションスキルのレベルも高い人物が少数精鋭で進める。
2詳細設計要件定義で決めた内容をもとに、システムの設計書を作る。どんな設計にしたら顧客の課題を解決できるかを考えられる、技術スキルの高い人物が少数精鋭で進める。
3製造システムの設計書をもとに、プログラムを書く。プログラミングスキルさえあれば担当できるので、高い技術レベルは不要。作業量が多いので多人数で進める。
4テストシステムが正しく動くかテストする。正しく動かなければ問題点を見つけて修正する。プログラミングスキルさえあれば担当できるので、高い技術レベルは不要。作業量が多いので多人数で進める。

一方で、日本では解雇規制が厳しいため、「必要な時だけエンジニアを雇う」ということができません。一度雇ってしまうとそう簡単には解雇できないのです。

しかし、SIerからの支援を受ければ、必要な時に必要な分だけITエンジニアの労働力を獲得して、システム開発を問題なく進めることができます。

以上をふまえ、システムを自社開発する企業であってもSIerからの支援が必要であり、SIerへのニーズは残り続けます。

企業の重要戦略に関わるシステムは共通サービスを使わず個別に開発する

近年ではクラウドサービス等、既にシステムとして出来上がっていて安価に使えるサービスが世の中に数多く提供されています。そのため、各企業はイチからシステムを開発する必要がなくなり、システム開発を請け負うSIerは仕事がなくなり不要になると囁かれています。

しかしこれも全くの暴論です。

なぜならば、各企業は市場における重要戦略に関わるシステムは自社独自の優位性を担保するために個別に開発するからです。

例えば、以下のような「それ単独では企業としての優位性には直接影響しない業務」については、個別にシステムを開発する必要はなく、安価なありもののサービスを活用することが多いでしょう。

市場での優位性には
直接影響しない業務
業務に必要なシステム安価なありもののサービス 例
社員同士の社内コミュニケーションチャットシステム・Srack
・チャットワーク
社員の勤怠管理勤怠管理システム・ジョブカン
契約業務電子契約システム・クラウドサイン
・GMOサイン

上記システムをあえてSIerに依頼して個別開発するメリットはないと言えます。しかし、例えば以下のような「市場における企業の競争力に直結する業務」については、ありもののサービスを活用することは稀です。

市場における企業の競争力に直結する業務 例
  • 自動車メーカーにとっての生産管理
  • 食品メーカーにとっての品質管理
  • 航空会社にとっての運行管理

なぜならば、ありもののサービスを活用していたら競合他社と差別化できないからです。

トヨタは自社独自の生産管理を自社独自のシステムで行っているから世界トップの競争力があるのです。ありもののサービスを使って生産管理をしていたら、競合他社と差別化できず競争力が生まれません。

どの企業も、自社の競争力に直結するシステムは自社の戦略にあわせて個別に開発します。安価なありもののサービスを使うよりも、自社の競争力のために莫大な投資をして個別にシステムを開発するのです。このニーズは永遠になくならないため、SIerに対するシステム開発ニーズも残り続けます。

SIerの平均年収は1,200万~600万

SIerの平均年収は、企業に応じて差があります。実際にどれくらいなのか、各企業の有価証券報告書2023年版の就職四季報のデータをもとに、平均年収が高い順に大手・中小SIer100社の年収を以下の通り調査しました。

順位会社名平均年収
1野村総合研究所1,225万
2電通国際情報サービス1,047万
3三菱総合研究所1,010万
4伊藤忠テクノソリューションズ933万
5オービック933万
6日立製作所890万
7都築電気878万
8NEC863万
9日鉄ソリューションズ855万
10大塚商会843万
11NTTデータ841万
12みずほリサーチ&テクノロジーズ837万
13ネットワンシステムズ825万
14BIPROGY821万
15ユニアデックス818万
16富士通エフサス817万
17日立システムズ812万
18コベルコシステム808万
19フューチャー807万
20ビジネスエンジニアリング805万
21~50位も見る
順位平均年収会社名
21NECネッツエスアイ802万
22丸紅情報システムズ800万
23日立ソリューションズ791万
24ニッセイ情報テクノロジー790万
25JSOL784万
26兼松エレクトロニクス781万
27サイバネットシステム776万
28NTTコムウェア773万
29テクマトリックス772万
30インフォコム772万
31JBCCホールディングス769万
32SCSK752万
33NECソリューションイノベータ750万
34エクサ750万
35リンクレア743万
36JFEシステムズ742万
37エクシオグループ739万
38三菱ケミカルシステム739万
39YE DIGITAL733万
40ソースネクスト732万
41中電シーティーアイ729万
42オージス総研725万
43セゾン情報システムズ722万
44インターネットイニシアティブ718万
45日商エレクトロニクス718万
46TIS714万
47三井E&Sシステム技研709万
48トヨタシステムズ708万
49日本証券テクノロジー708万
50日本事務器697万
51~100位も見る
順位会社名平均年収
51SBテクノロジー696万
52アルファテック・ソリューションズ695万
53日興システムソリューションズ695万
54スミセイ情報システム694万
55三菱UFJインフォメーションテクノロジー690万
56農中情報システム690万
57NTTデータイントラマート689万
58日本プロセス687万
59日本総合研究所686万
60ニッセイコム680万
61情報技術開発679万
62電算678万
63アイネス675万
64システムエンタープライズ675万
65ODKソリューションズ674万
66東芝情報システム673万
67システムインテグレータ664万
68クオリカ660万
69日立システムズエンジニアリングサービス659万
70信組情報サービス656万
71インテック655万
72セック655万
73AJS651万
74日本情報通信650万
75菱友システムズ648万
76NCS&A644万
77SOMPOシステムズ644万
78NSD642万
79アルプス システム インテグレーション641万
80SRA638万
81NTTデータCCS635万
82メイテツコム635万
83鈴与シンワート631万
84キーウェアソリューションズ629万
85ラック628万
86アイ・エス・ビー627万
87ベリサーブ625万
88SCC623万
89アイレット621万
90ソリトンシステムズ620万
91ミロク情報サービス614万
92ソルクシーズ614万
93シーイーシー613万
94ハイマックス611万
95さくらケーシーエス610万
96東京海上日動システムズ609万
97ベース602万
98東計電算601万
99富士ソフト600万
100キャピタル・アセット・プランニング600万

50位でも700万、100位でも600万と、世間一般の平均年収よりは高めです。

参考

SIer業界問わず業界全体における日本企業の平均年収は403万円です。
出典 doda 平均年収ガイド

SIer業界へ就職すれば、世間一般より高い年収をもらえます。

SIerの残業時間

厚生労働省による毎月勤労統計調査によると、SIerが属する情報通信業界の残業時間は16.1時間でした。他の業界と比べて残業時間が少し多い結果になっています。

厚生労働省による毎月勤労統計調査とは

労働時間等の変動を明らかにすることを目的に厚生労働省が実施している調査です。大正12年から定期的に実施されている国の重要な統計調査であり、情報の信頼性は高いです。

月16.1時間ということは、毎日1時間も残業していないことになります。実際にSIerで働いていた筆者の感想としては、16.1時間は実態より少ない印象です。筆者の経験もふまえ、実際は以下を理由に16.1時間より多いと考えます。

厚生労働省が調査した残業時間は実態より少ないと思われる理由
  • 「情報通信業」を対象とした調査のため、SIer以外の情報通信企業の残業時間も含まれている
  • 職種を問わない調査のため、事務職などSIerの中でも残業が少ない少数派の残業時間も含まれている

SIerに限定した残業時間については、統計調査は公表されていませんでした。そこで、実際に私がSIerで働いていた時の平均残業時間を紹介します。

【経験談】SIer時代の筆者の残業時間

時期別に平均残業時間が異なります。

時期月の残業時間平均的退社時間
2020~2018年頃40時間18~20時頃退社
2018~2016年頃60時間19~21時頃退社
2016~2012年頃80時間21~24時頃退社
筆者のSIer勤務時代の残業事情

徐々に残業時間が減っているのはなぜですか…?

SIer未経験者

昔よりも最近の方が残業時間が少ないのはなぜですか…?

働き方改革関連法の制定を背景に、徐々に残業時間が減っていきました。

働き方改革 関連法とは

国民一人一人がもっと働きやすい環境を整備し、日本の経済力を上げるために日本政府が定めた法律です。ワークライフバランス実現のために長時間労働を抑制するルール等が盛り込まれています。

企業は、働き方改革関連法に違反して社員に残業させまくると、刑事罰に問われる恐れがあります。このルールが2018年に公布されたことから、長時間労働が当たり前だったSIer業界も残業時間の削減に積極的に取り組んできました。

職種別の残業時間

一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)による「情報サービス産業基本統計調査」における、SIerの職種別残業時間の調査結果は以下の通りです。

システム開発プロジェクトに参加するメンバー(システムエンジニア等)システム開発プロジェクトを指揮するプロジェクトマネージャー
通常期の残業時間20時間25.2時間
繁忙期の残業時間38.2時間45.1時間

実際に私がSIerで働いていた際も、プロジェクトのメンバーよりプロジェクトマネージャーの方が忙しいのが常識でした。上記調査結果は現場の実態にかなり近いです。

SIerに就職するなら、繁忙期は月40時間の残業はあると考えてください。

SIerの勤務地

SIerの勤務地は、東京・大阪に限らず全国に存在します。各SIer企業が保有する地方拠点や、地方に本社を置くSIerの数だけ勤務地があると考えてください。

SIerに転勤はあるか

詳細は各企業によりますが、原則として定期的な転勤はありません。なぜならば、以下を理由に社員を定期的に全国転勤させるメリットがSIer企業にはないからです。

理由①定期的な異動は業務に支障をきたす

SIerのシステム開発プロジェクトは開始から終了まで数年単位かかります。その中で定期的に無理矢理人員を異動させるとシステム開発プロジェクト運営に支障をきたし、利益を損なう恐れがあります。

理由②顧客との関係に支障をきたす

SIerは、どれだけ顧客や顧客が属する業界・商習慣を理解するかが非常に重要です。なぜならば、顧客のことを理解しなければ顧客の課題にあった適切な解決策を提示・実行できないからです。顧客のことを理解するには長期にわたり顧客とコミュニケーションをとっていく必要があります。そんな中で定期的に人事異動すると顧客との関係に支障をきたします。

理由③IT業界全体として全国転勤が少ない

そもそもIT業界自体に全国転勤の文化がありません。もしもSIerだけが全国転勤を取り入れて社員に転勤を命じれば、その社員は全国転勤がない別の企業へすぐに転職する恐れがあります。

SIerで転勤があるとしたら幹部の戦略的異動

ただし、SIerにおいて全く転勤がないわけではありません。たとえば、会社の事業戦略上、強化したい地方拠点に対して適切な人員を配置するために転勤を命じることはあります。

ただし、地方拠点への転勤は重要な事業戦略を任せられる幹部や管理職に限った話です。私が所属していたSIer企業では、平社員やマネージャーが定期的に転勤されることはありませんでした。

SIerの職種

SIerの職種は大きく分けると以下の3つに分類されます。

  • エンジニア系職種
  • 営業職
  • スタッフ系職

以下、順に解説します。

エンジニア系職種

ITに関する専門知識を持つ職種の分類を指します。具体的には以下の職種があります。

プログラマー設計書に基づきプログラムを書く。
書いたプログラムが想定通り動くかテストする。
システムエンジニアシステムの機能別に設計書を作る。
設計書に基づきプログラマーへプログラミング作業を依頼する。
プログラマーが書いたプログラムをチェックする。
自らプログラムを書く。
プロジェクトマネージャーシステム開発プロジェクトの責任者として、計画、人員、予算、納期、リスク等を管理する。システム開発を成功に導く。
ITアーキテクトシステム全体の方向性・仕組みから運用保守までを見通して、システムの全体を設計する。
どんな技術を採用すべきか決める。
ITスペシャリスト特定の技術について高い専門性を持ち、他のエンジニアでは解決できない難易度の問題や設計に対応する。
ITコンサルタント企業の経営課題を分析し、ITによる具体的な課題達成策を提案する。
SIerのエンジニア系職種

新卒で入社した人は、エンジニア系職種に配属されたらまずプログラマーからキャリアをスタートします。その後システムエンジニアとなり設計等を経験した後、自身の希望やスキルに応じて進みたいキャリアを選んでいくのが一般的です。

営業職

SIerの営業とは、顧客企業に対する窓口となり具体的には以下の役割を担います。

受注するための提案活動顧客の課題ヒアリング
顧客の課題を社内に報告し、提案準備
提案プロジェクトマネージャーと共に顧客へ提案実施
顧客との金額交渉
受注のための諜報活動
契約手続き
受注後の社内管理開発プロジェクトの進行状況チェック
収支状況のチェック
受注後の顧客対応自社の開発チームに対する不満がないか定期ヒアリング
保守契約の更新手続き

SIer営業は、世間一般の営業職とは異なる特徴があります。

SIer営業
世間一般の営業
  • 売る製品が決まっていない
  • 売った金額だけでは評価されず、利益を残せるかが重要
    ※たとえば「1億円で売れたけど2億円の赤字になる」リスクがありうる
  • 自社のエンジニアの稼働状況や顧客の課題に応じて、提案するかしないかを慎重に判断する必要がある
  • 売った後の方がトラブルが起きるリスクがあり、慎重な対応が必要
  • 売る製品が決まっている
  • 売った金額で評価される
  • とにかく売りまくることが大事
  • 売ったら終了で次の商談へ

上記をふまえ、世間一般の営業に向いているとされている人はSIer営業には合わない可能性があります。逆に、世間一般の営業に向いていない人がSIer営業には向いていることもあります。SIer営業の仕事内容については、以下の記事で詳細を解説しています。

≫ 10年勤務した経験者が紹介!SIer営業の仕事内容と転職戦闘力

スタッフ系職種

SIer企業に限らず民間企業であれば企業活動において必要となる以下の部署で勤務する職種が該当します。

  • 経理・財務部
  • 人事部
  • 法務部
  • 広報部
  • 総務部

また、上記以外にSIerならではの以下の管理系部署に属する社員も含まれます。(部署が存在するかはSIer企業に応じて異なります)

パートナー管理部署

大原則として、SIerは自社単独でシステム開発することはありません。必ず、外部のIT企業にも一部作業を依頼したり、SES企業から人を派遣してもらいながらシステム開発を進めます。一緒に仕事をする外部企業は「パートナー企業」と呼ばれることが多いです。多くのSIerでは、そのパートナー企業を管理する部署が置かれています。

収益管理部署

SIerのシステム開発では、定期的な収益管理が非常に重要です。なぜならば、収益状況をチェックし適切に管理しなければあっという間に赤字になってしまうリスクがあるからです。多くのSIerでは、1つ1つのシステム開発プロジェクト状況の収益をまとめて管理する部署が置かれています。

SIerで身につくスキル

実際に9年間SIerで働いた経験からいうと、SIerではかなり貴重なスキルを身につけることができます。具体的には以下のスキルです。

SIerで身につくスキル
  • 多数の関係者と合意形成しながら物事を進めるスキル
  • どんな問題が発生しても対処できる問題解決スキル
  • 転職市場で希少性が高い大手企業向けビジネススキル

以下、順に解説します。

①多数の関係者と合意形成しながら物事を進めるスキル

SIerの仕事は全てにおいて関係者が多数存在します。

  • システム開発提案中
    • 社内
      • 営業
        • 担当営業
        • 営業の上司
      • エンジニア系職種
        • 提案をとりまとめるプロジェクトマネージャー
        • プロジェクトマネージャーの上司
        • 提案に技術的アドバイスをするITアーキテクト
        • 提案に技術的アドバイスをするITスペシャリスト
      • スタッフ系職種
        • 提案の収益リスクをチェックする収益管理部スタッフ
        • 契約の法的リスクをチェックする法務スタッフ
    • 社外
      • 顧客
        • 提案先部署の担当者
        • 提案先部署の担当の上司
        • 決裁者
        • 決裁に影響を与える発言力のある人達
        • 契約金額を審査する購買部門
      • パートナー企業・協業企業
        • システム開発を受注した場合にエンジニア派遣してくれるSES企業
        • システム開発提案に用いた製品を開発している企業
  • システム開発中
    • 社内
      • 営業
        • 担当営業
        • 営業の上司
      • エンジニア系職種
        • 開発に責任をもつプロジェクトマネージャー
        • 現場での作業を指揮するプロジェクトリーダー
        • 各チームの開発メンバー
        • 技術的アドバイスをするITスペシャリスト
      • スタッフ系職種
        • 提案の収益リスクをチェックする収益管理部スタッフ
    • 社外
      • 顧客
        • 開発プロジェクトの担当者
        • 開発プロジェクトの担当の上司
        • 実際にシステムを使うユーザー部門
      • パートナー企業・協業企業
        • SES企業
        • システム開発提案に用いた製品を開発している企業

システム開発の提案時も、受注した後のシステム開発作業も、全ての関係者と合意形成しながら物事を進めなければなりません。もしも関係者の意向を無視して仕事を進めてしまえば、後で「そんな話は聞いていない」と指摘されて大問題になりかねません。

システム開発ではそう簡単にやりなおしできない

実は、システム開発は一度作ってしまったものを後から手直しするハードルが非常に高いです。なぜならば、「ちょっと手直しする」といっていも、以下の工程が必要になるからです。

手直しに必要な工程
  • 手直しすることで影響が発生する箇所がないかの影響調査
  • 手直し作業
  • 手直し作業後に問題なくシステムが動くかのテスト

最悪の場合、もう一度イチから作り直すほどのコストがかかることもあります。しかし、大幅な追加コストは契約先顧客は払えませんし、SIerが自社で負担すれば大赤字になってしまいます。

以上をふまえ、「そんな話は聞いていないからやり直せ」という指摘が後からでないよう、事前に関係者と漏れなく齟齬なく合意形成する必要があるのです。

多数の関係者合意は実は難易度が高い

SIerで仕事をしていると当たり前のように「多数の関係者と合意形成しながら物事を進める」ようになります。

実は、多数の関係者と合意形成しながら物事を進めるのは難易度が高く、貴重なスキルです。

SIer未経験者

ただ合意形成するだけでしょ?簡単では?

簡単ではありません。関係者によって以下が全く異なるため、何も考えず「これいいですか?」と聞くと玉砕してしまいます。

関係者毎に異なる要素
  • 会社内で背負っている役割/役割
  • 自身の考え
  • 自分の上司の考え
  • 保有する前提知識

何かを相手と合意形成するためには、相手にOKと言ってもらうための作戦を脳内で練っておく必要があるのです。

作戦を練る例
合意形成の シナリオを考える人

私の考えに対して相手にOKと言ってもらうには…

・相手にとってのメリットは?
・相手にとってデメリットは?
・どんな順番で何て言ったら伝わるかな?

上記のコミュニケーションを全ての関係者毎にとらなければなりません。中には、どんなに作戦を練ってもNoと言われてしまうこともあり、その場合はまた別の案を考える必要があります。

SIerでは上記業務を頻繁に経験するため、多数の関係者と合意形成しながら物事を進めるスキルが自然と身に着きます。

②どんな問題が発生しても対処できる問題解決スキル

SIerの仕事においては、ITに関する技術的な問題はもちろん、ITとは直接関係がない問題も発生します。

ITに関する技術的な問題
ITとは直接関係がない問題
  • バグが直らない
  • システムへのアクセスが急増して動きが遅くなってしまう
  • システム開発プロジェクトメンバーのAさんとBさんの仲が悪くてケンカになる
  • 顧客企業に常駐しているSEが居眠りしてしまう
  • 顧客側の担当者と、自社の開発チームリーダーの相性が悪い

たとえITとは直接関係がない問題だとしても、SIerは問題解決に取り組みます。何故ならば、SIerのミッションは顧客の課題を解決することであり、そのための障壁は全て取り除く必要があるからです。

例えば、プロジェクトマネージャーがシステム開発プロジェクトで対応する問題の例は以下の通りです。

分類発生しうる問題
タスクプロジェクトメンバーに割り振った仕事の遅延
コミュニケーションの認識齟齬
仕事の品質の低さ
プロジェクトメンバー間の人間関係
プロジェクトメンバーの体調不良
プロジェクトメンバーのモチベーション
技術技技術的障壁の発生
要件の考慮漏れ
コミュニケーション経営層からの期待値のズレ
関連する他部署との衝突
スケジュール変更による関連部署との調整経営層からの期待値のズレ
プロジェクトで起こりうる問題

問題が発生したらその原因を分析し、適切な対応策を考えて実行します。

様々な問題に対応していると段々と問題が発生することに慣れてきて、どんな問題が発生しても冷静に適切に処理できるスキルが身につくのです。

③転職市場で需要が高い大企業向けビジネススキル

SIerの取引先はほとんどが大企業です。なぜならば、SIerへ依頼する仕事の額は大企業でないと支払えない規模だからです。

システム開発数千万~数億円
エンジニア常駐一人当たり100~200万円/月
SIerが提供するサービスの価格帯

SIerに属する社員が日常的にやりとりする相手は大企業となります。大企業を相手にした仕事は以下の特徴があります。

求められる水準が高い

SIerの仕事相手となる大企業は、仕事において求める水準が高いです。なぜならば、大企業は年収や条件面が良い故に応募者が多く集まり、よりたくさんの応募者の中から厳選された優秀な人が入社しているからです。優秀な人は相手に対しても相応の仕事の水準を求めます。

大企業相手には低レベルな仕事は許されない

たとえば、SIerで以下のような仕事をしていると、「仕事のレベルが低い」と顧客から改善要望を確実に受けます。

  • 文字ばかりでわかりにくい資料
  • 結論から話さない回りくどい説明
  • 約束した期日を忘れる

言い換えると、SIerで仕事をしていれば、大企業の担当者を満足させるレベルのスキルを習得可能です。

考慮すべき関係者が多い

大企業相手の仕事では、「複数の関係者と合意形成していくスキル」が高いレベルで求められます。なぜならば、大企業を相手にすると関係する部署・人物が増えるからです。顧客企業内での意思決定のルートも抑えておく必要があります。

大企業中小企業
顧客側の関係者業務部門の担当者/部長
各営業支店の担当者/部長
情報システム部門の担当者/部長
購買部門の担当者/部長
担当者/部長
稟議ルート顧客企業内で明確に規定されている。

【例】
各部門の責任者が承認

経営会議で承認

取締役会で決議
社長の承認のみ
大企業と中小企業での関係者の比較

大企業である顧客企業内の複数の関係者と合意していくには、例えば以下を気にしながら慎重かつ丁寧にコミュニケーションを重ねる必要があります。

複数の関係者と合意形成する際の考慮ポイント
  • 関係者それぞれの性格・思惑
  • 自社の提案が、関係者それぞれにとってどんなメリットがあるか
  • 関係者同士の力関係や関係性

以上を考慮して動けるマインドがないと、大企業相手の仕事を前に進めるのは難しいのです。

SIerでは大企業を相手に仕事をするため、自然と上記のスキルを身につけることができます。

転職市場で需要が高い

「大企業を相手に仕事できるスキル」は、実は転職市場においては需要が高いです。なぜならば潤沢な資金を持つ大企業相手の仕事は大きな売上を稼げる可能性があり、企業向けのBtoB事業・サービスを展開する企業にとって魅力的だからです。

大企業向け中小企業向け
売上投資資金が潤沢なので大きくなりやすい高単価商材は売れにくい
資金回収リスク潰れにくいのでリスク低倒産したら回収できないリスクあり
契約継続意思決定に時間がかかる分、一度契約してしまえば数年間は安泰(解約の意思決定にも時間がかかる)解約リスクあり
大企業向けと中小企業向け取引の比較

以上をふまえ、大企業相手に仕事できるスキルを持つ人材へのニーズは強いのです。

SIerで働けば、大企業向けに仕事するスキルを身につけ、転職市場での市場価値も上がります。

「SIerにはスキルがない・身につかない説」への反論

「SIerはスキルが身につかないからやめとけ」という意見やネットの記事をよく見かけます。代表的な主張は以下の通りです。

「SIerはスキルがない・身につかない説」の主張
  • SIerは自身では開発せず、下請企業(パートナー企業)に開発作業をさせるので技術スキルがない。
  • SIerがやっているのは顧客との調整だけ。
  • SIerが触るのはExceだけl。開発ツールには触れないので、技術力はつかない。

実際にSIerで働いていた身からすると、上記は見当違いの主張です。以下、順に解説します。

SIerは技術力がないのは本当か

「SIer自身は下請企業(パートナー企業)に開発作業をさせるので技術スキルがない」

私が所属していた大手SIerに限定していうと、上記は間違っています。その理由を、システム開発全体におけるSIerの関わり方に触れながら解説します。

システム開発は工程毎に難易度が異なる

まず、システム開発とは以下の工程を辿ります。(以下は「ウォーターフォールモデル」という、SIerでは一般的なシステム開発工程です。それ以外の開発工程については割愛します)

順番工程具体的作業内容相対的な
難易度
1要件定義顧客の課題を解決するために、何ができるシステムを作るのか(=要件)を定義する。かなり高
2詳細設計要件定義で決めた内容をもとに、システムの設計書を作る。
3製造システムの設計書をもとに、プログラムを書く。普通
4テストシステムが正しく動くかテストする。正しく動かなければ問題点を見つけて修正する。普通
5納品テストが完了したらシステムを顧客に引き渡し、代金を回収する。-
※事務手続きのみ
システム開発の工程

最初の工程は「上流工程」と呼ばれており、難易度が高いとされます。なぜならば、「何ができるシステムを作るのか」「システムをどんな設計にすべきか」は抽象的で曖昧な問いであり、何が正解かわかりにくいからです。正解だったか否かは実際にシステムを作ってみないとわかりません。

逆に、後ろの工程である下流工程に属する開発・テストは、上流工程に比べると難易度が低いです。なぜならば、どんな動きをするどんな機能を作るべきかは、既に設計書に記載されているからです。達成すべき正解は決められていて、それを満たせるプログラムを書くのみです。

単価を叩かれやすい作業はSIer自身はやらない

工程の難易度は顧客が支払う対価に比例します。難易度が低い工程に対しては顧客からの厳しい価格交渉を受けたり、競合他社を意識したりしてなるべく価格を下げる必要があります。そのため、SIerは自ら開発作業せずに下請企業(パートナー企業)に依頼するのです。

難易度が低い工程は価格を叩かれる流れ

SIer業界では、システム開発の見積を顧客に提示する際に以下の暗黙のルールがあります。

  • 工程別に金額を分けて記載する
  • 各工程においてどれだけの作業量が発生するのか工数を記載する
工数(こうすう)とは

IT業界においてエンジニアの作業量を示す言葉です。「人日(にんにち)」「人月(にんげつ)」等の単位が用いられます。

  • 「工数 1人日」とは、1人のエンジニアの作業1日分(8時間分)を指します。
  • 「工数1人月」とは、1人のエンジニアの作業1か月分(平日5日間×4週間=20人日分)を指します。

なぜならば、工程別の金額と工数情報がないと顧客が社内で説明できないため、必ず顧客から上記の記載を求められるからです。たとえばSIerは以下のように開発費用の見積を顧客へ提示します。

工程金額工数
要件定義4,000,000円2人月
詳細設計6,000,000円4人月
開発12,000,000円8人月
テスト8,000,000円6人月
SIerが顧客へ提示する見積の例

上記のように見積を出すと、「金額÷工数」によって、各工程におけるエンジニア1人あたりの平均単価がわかってしまいます。(中には「見積資料に単価も明記してください」と要望する顧客も存在します)

工程金額工数金額÷工数で算出できる
エンジニア一人当たり単価
要件定義4,000,000円2人月2,000,000円
詳細設計6,000,000円4人月1,500,000円
開発12,000,000円8人月1,500,000円
テスト8,000,000円6人月1,200,000円
見積から単価がわかってしまう

ここで、難易度が相対的に低い開発・テスト工程の単価が高いと、顧客から確実に突っ込まれます。もしも要件定義や詳細設計と同程度の単価だと、そのまま稟議を通してもらい受注するのはまず不可能です。

SIerから提案を受ける顧客

開発・テスト工程の単価が高すぎます。要件定義や詳細設計に比べれば難易度低いのだからもっと安い単価のエンジニアに作業させればもっと金額抑えられますよね?
この見積では私も社内の稟議通せないので頼みますよ…

他社とのコンペであれば顧客から突っ込まれる前の提案準備段階で、価格競争力を担保するために開発・テスト工程の単価はなるべく抑えるのがSIer業界の常識です。ただし単価を抑えるといっても、大手SIerの社員の単価は社内の給与水準なども考慮されて一律で決まっており、勝手に下げることはできません。

そこで、自社の社員ではなくてもできる作業は、なるべく単価の安いパートナー企業に実施させて、価格競争力を担保するのです。

以上をふまえ、「SIer自身は開発作業をせずに下請企業(パートナー企業)に依頼する」のは本当です。※尚、以上は大手SIerでの一例であり、中小SIerは自身で開発作業するケースもあります。

SIerは要件定義・詳細設計フェーズで技術力を発揮する

下流工程である開発作業はパートナー企業に依頼するものの、上流工程である要件定義・詳細設計はSIerが自ら行います。

要件定義・詳細設計ではプログラミング作業こそ行わないものの、技術力は必要です。なぜならば、顧客の課題を解決するために、どんな技術を用いてどんなシステムを作るのかの全体像を設計するからです。

料理で例えるなら、レシピを考える工程です。たくさんの料理を経験し料理における技術や豊富な知識がないと自らレシピを考えることはできません。

以上をふまえ、「SIerは技術力がない」という主張は正しくありません。

参考:筆者が所属していたSIerでのハイスペックエンジニア

実際、私が所属していたSIerでも、以下のように各技術に精通して社内でも名が通っているハイスペックなエンジニアが存在していました。(以下 仮名)

  • データベース構築といえば田中さん
  • セキュリティといえば吉田さん
  • データ分析といえば鈴木さん

SIerで働けば誰しもが技術力がつくわけではない

「SIerに技術力はあるか」に対してはYesですが、「SIerで働いていれば技術力がつくか」と言われると、答えはNoです。

SIerの中にも高い技術力を持つエンジニアは確かに存在します。しかし、彼らはSIerで働いていたから自然と技術力がついた訳ではなく、自らの学びによって技術力を身につけてきたと言えます。

新卒でSIerに入社した時は誰しもが新人エンジニアです。例え学生時代にプログラミングを学んでいたとしても、プロとしては1年生。そこからプロのITエンジニアとしてのキャリアをスタートします。

自分のエンジニアキャリアの中で、自分が興味を持った分野、スキルを高めたいと思った分野について自主的に学び技術力を高めてきた結果、技術力の高いエンジニアの域に達したのです。

SIerで身に着くのはプロジェクトマネジメントスキル

SIer未経験者

SIerで働いても、自ら知識を学ばないと技術力は身に着かないのですね…

自ら知識を学ばないと技術力が身に着かないのはSIerに限りません。IT業界のみならず、どの世界においても共通です。「学ばずにスキルを得たい」という考え自体が甘いと言えます。

ただし、SIerでは自ら学ばなくても日常業務の中で確実に身に着くスキルがあります。プロジェクトマネジメントスキルです。

SIerのエンジニア系職種ではプロジェクトマネージャーを目指すキャリアが大半となります。なぜならば、SIerの収益の大半はシステム開発プロジェクトによるため、プロジェクトを運営できるプロジェクトマネージャーの人数をできる限り増やしたいからです。

SIerで自ら技術力を高めなかった人は、自動的にプロジェクトマネージャーへのキャリアを進むことになります。プロジェクトマネージャーは日常の業務を通じてプロジェクト運営の経験=プロジェクトマネジメントスキルが身に着きます。プロジェクトマネジメントスキルは技術スキルに比べると軽視されがちですが実は以下を理由に非常に汎用性が高いスキルです。

プロジェクトマネジメントスキルの
価値が高い理由
  • プロジェクトマネジメントスキルには流行り廃りがないから
  • IT業界以外の業界でも需要が高いスキルだから

あなたはSIer業界にいれば、プロジェクトマネジメントスキルを身につけて市場価値の高い人材になれます。

SIerに入社するには

SIer企業に入社するための経路は以下の2つです。

  • 新卒採用で入社
  • 中途採用で入社

以下、順に解説します。

新卒採用では文系理系問わない

SIer企業の多くは新卒採用を実施しています。実際、筆者も文系学部を卒業後に新卒でSIer企業に入社しました。

SIer企業の新卒採用では、文系・理系は問いません。文系でもSIerに入社してエンジニア部署に配属されるケースは普通にあります。

一方で、情報系学部出身や、既にプログラミングスキルを身につけていれば新卒就活で有利なことは間違いありません。なぜならば、「この学生はITに関してアレルギーがなく、入社後も自発的に技術を学んでくれそうだ」と面接官に思わせることができるからです。

今大学生でSIer業界への就職を希望している人は、プログラミング等のIT技術に少しでも触れておくことをオススメします。

中途採用なら学歴フィルターを無視できる

ほとんどのSIer企業は以下を理由に中途採用を行っています。

SIer企業が中途採用で人を採用する理由
  • 毎年一定数は転職による退職者が出るためその補填が必要
  • 事業成長のためには中途採用で人増やす必要がある

実際、私が新卒で入社したSIer企業においても、同じ部署の半分以上は中途採用経由で入社した人達でした。

尚、大手SIer企業の場合、新卒採用においては学歴フィルターが設けられていることがあります。

学歴フィルターとは?

大学生の新卒就職活動において、企業が採用する学生を学歴によって選別すること。大学名のみで判断されて選考から落とされる状況を指します。

実際、私が新卒で入社した大手SIer企業では、同期約100人のうち出身大学は以下の割合でした。

参考:筆者が所属していた大手SIerの出身大学
  • 東大・京大:5%
  • 東工大・一橋大:5%
  • 地方国立大:40%
  • 早稲田・慶應:30%
  • 理科大・ICU・上智・MARCH・関関同立:20%

大手SIer企業へ新卒で入社するには、一定以上の学歴が必要とわかります。

一方で、中途採用で入社した人の出身大学はバラバラでした。世間一般には「Fラン」と呼ばれている大学出身の人もいましたが、出身大学は関係なく非常に優秀でした。中途採用選考では出身大学よりも以下が重視されます。

中途採用で重要視される要素 例
  • これまでの仕事を通じてどんなスキルを持っているのか
  • 当社で活躍できそうか

上記を論理的にわかりやすく面接官へ伝えられれば、中途採用では出身大学は関係なく内定が出ます。

代表的なSIer企業

SIer企業は大きく分けて以下の3つの分類があります。

  • メーカー系SIer
  • ユーザー系SIer
  • 独立系SIer

以下、分類と代表的な企業を解説します。

 メーカー系SIer

メーカー系SIerとは、パソコンやサーバーを製造しているメーカー企業出身のSIerを指します。メーカーのグループ会社としてSIer事業を展開していることもあれば、1企業がメーカー事業とSIer事業の両方を展開しているケースもあります。

メーカー事業ではハードウェアを製造する大規模な工場や物流拠点等多額の設備投資が必要であり、大企業でないと運営できません。メーカー系SIerは、メーカーとしての大規模な資本をもとにした安定した経営基盤を持つと言えます。

日本の大企業メーカーの福利厚生を享受できるのも大きなメリットです。

代表的なメーカー系SIer企業

年収順位会社名平均年収
1位日立製作所890万
2位都築電気878万
3位富士通865万
4位NEC863万
5位富士通エフサス817万
6位日立システムズ812万
7位NECネッツエスアイ802万
8位日立ソリューションズ791万
9位NECソリューションイノベータ750万
10位東芝情報システム673万
平均年収順 メーカー系SIer企業

ユーザー系SIer

ユーザー系SIerとは、IT業界問わず大企業の情報システム部門が、子会社や関連会社として独立して生まれたSIerを指します。親会社との関係が深い企業が多く、社名には親会社の名前の一部が入っている企業が多いです。

親会社が大企業の場合は経営が安定し、福利厚生も充実しています。

全てのユーザー系SIerは親会社向けの仕事を手掛けています。親会社が使うシステムをユーザー系SIerが開発・運用する形です。一方で、親会社とは関係ない企業との取引をしていることも多いです。

参考:ユーザー系SIerの外販事業

ユーザー系SIerにおいて親会社以外の企業向けの仕事は「外販」と呼ばれています。

全体の売上に占める外販の割合が大きいほど親会社との取引への依存度が小さく、より安定していると言えます。ユーザー系SIerへの転職を検討する際は、親会社向け事業と外販事業との売上の割合をチェックしましょう。

代表的なユーザー系SIer企業

順位会社名平均年収
1位野村総合研究所1,225万
2位電通国際情報サービス1,047万
3位伊藤忠テクノソリューションズ933万
4位日鉄ソリューションズ855万
5位NTTデータ841万
6位コベルコシステム808万
7位丸紅情報システムズ800万
8位ニッセイ情報テクノロジー790万
9位JSOL784万
10位兼松エレクトロニクス781万
平均年収順 メーカー系SIer企業

独立系SIer

独立系SIerとは、特定の親会社が存在しないSIerを指します。親会社・グループ会社とのしがらみがないため、メーカー系SIerやユーザー系SIerに比べて自由に事業を展開できます。

参考:メーカー系・ユーザー系SIerが受ける影響

メーカー系SIerとユーザー系SIerでは、親会社・グループ会社の影響は必ず受けます。

メーカー系SIerが受ける影響の例顧客にシステム開発を提案する際、親会社メーカーが製造する製品を提案内容に盛り込む必要がある。たとえ本当は他にもっと良い製品があったとしても、親会社の製品を採用しなければならない。
ユーザー系SIerが受ける影響の例SIerとして事業戦略において、必ず親会社の承認をもらわなければならない。現場は満場一致で賛成している事業戦略でも、親会社から反対を受ければ採用されない。
メーカー系・ユーザー系SIerが受ける影響の例

独立系SIerはしがらみがない分より幅広く事業を展開できるため、入社すれば様々な経験を積みスキルを積み上げやすいです。

代表的な独立系SIer

順位会社名平均年収
順位会社名平均年収
1位オービック933万
2位大塚商会843万
3位ネットワンシステムズ825万
4位BIPROGY821万
5位ユニアデックス818万
6位ビジネスエンジニアリング805万
7位サイバネットシステム776万
8位テクマトリックス772万
9位JBCCホールディングス769万
10位リンクレア743万
11位エクシオグループ739万
12位インターネットイニシアティブ718万
13位TIS714万
14位日本事務器697万
15位情報技術開発679万
16位電算678万
17位アイネス675万
18位システムエンタープライズ675万
19位ODKソリューションズ674万
20位システムインテグレータ664万
21位クオリカ660万
22位インテック655万
23位セック655万
24位NCS&A644万
25位NSD642万
平均年収順 独立系SIer企業

まとめ:SIerはいいぞ

以上、SIerについて解説しました。改めてまとめると以下の通りです。

SIerとは…企業が抱える課題を、ITによって解決するIT企業
SIerの事業とは…システム開発
エンジニアの労働力を提供
製品販売
SIer不要論・オワコン論が見当違いな理由は…システムを自社開発する企業が増えてもSIerへのニーズは継続するから
企業の重要戦略に関わるシステムはどの企業も個別に開発したいから
SIerの平均年収は…600~1200万
SIerの残業時間は…通常期は月20~30時間
繁忙期は月40時間
SIerの勤務地は…本社や各地域拠点
定期的な全国転勤はなし
SIerの職種は…エンジニア系職種
営業職
スタッフ系職種
SIerで身につくスキルは…多数の関係者と合意形成してものごとを進めるスキル
問題解決スキル
大手企業向けビジネススキル
SIerに入社するには…大学生は新卒採用で応募
積極的に行われている中途採用で応募
代表的なSIer企業は…以下の3分類で存在する
メーカー系SIer
ユーザー系SIer
独立系SIer
SIerまとめ

SIerは世間では何かと批判されがちですが、実際に働いていた身からすると年収・身につくスキル・安定性・将来性いずれも水準が高くオススメの業界です。

SIerに興味を持った人は是非就職・転職を検討いただけると幸いです。

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