SIerの仕事とは

10年勤務した経験者が紹介!SIer営業の提案活動の具体的な流れ

SIer営業は日々様々な仕事をこなしていきますが、最も重要なミッションは仕事をとってくること(顧客へ提案して、案件・プロジェクトを新たに受注すること)です。

しかし、「SIer営業がシステム提案の中で具体的にどんな業務をしているのか」は、情報が無く想像できないですよね・・・?

SIer営業に興味がある人

SIer営業への転職に挑戦しようかと考えているけど、SIer営業って具体的に何をするのだろう・・・

自分のこれまでの経験を活かせるところはあるのだろうか?

この記事では、SIer営業がシステム提案を進める流れについて詳細を解説します。
この記事を読むと、自分がSIer営業になった際にシステム提案を進めていく流れを具体的に想像できるレベルで知ることができます。

この記事の結論

システム提案でSIer営業が担当する業務は以下の通りです。

  1. 提案させてもらえる案件を探索
  2. 社内で提案方針会議にかける
  3. 提案プロジェクトマネージャーと二人三脚で提案内容を作成
  4. 提案前に社内レビューを受ける
  5. 顧客への提案プレゼン
  6. 受注するための提案後活動
  7. 内示をもらったら契約締結
  8. プロジェクト開始後はプロジェクトマネージャーを支援

SIer営業はこれらの業務を通じて、『複数の関係者と合意形成しながら、問題解決を推進していく』という市場価値の高い経験を得られます。

提案させてもらえる案件を探索

SIer営業は「飛び込み営業していきなり提案」することはありえません

SIer営業が提案するシステムとは1,000万~数億規模の金額となり、いきなり提案して買ってもらえるものではないからです。

提案内容も、顧客企業に合わせて個別に組み立てるものであり、いきなり提案ということ自体ができません。

まずは、提案の機会を獲得する必要があります。
この提案機会獲得活動は、アカウント営業とソリューション営業とで異なります。

アカウント営業は担当顧客への提案機会を探る

アカウント営業が提案する先は自分の担当顧客です。
自分が担当しない顧客へ提案することはありません。

提案機会を獲得するためには、担当する顧客の中で、自社の技術で解決できる課題がないか調査することになります。

アカウント営業による案件探索活動の例
  • 担当顧客の事業内容から仮説を考えて、顧客にぶつけてみる
  • 普段接している顧客側の担当者から、別の部署の人を紹介してもらう
  • 自社のソリューション・商品を紹介してみる

ソリューション営業は提案できそうな企業を探す

ソリューション営業は、顧客を限定することなく担当するソリューションの提案先を探します。

闇雲に提案先を探すと効率が悪いので、「担当するソリューションが刺さりやすい企業の層」を絞り込んで探すことが多いです。
この過程を「セグメントを定める」「ターゲットを定める」と呼んだりします。

提案先を探す手法は様々です。例えば下記のようなやり方があります。

ソリューション営業による案件創出活動の例
  • 狙いたい企業が見ているであろうメディア(雑誌、ウェブサイト、新聞など)に広告を出す
  • ソリューションを紹介するセミナーを企画して集客する
  • 社内のアカウント営業向けに説明会を実施し、提案できる既存顧客を探す

提案辞退の方が多い?社内での提案方針会議

運よく顧客から課題をヒアリングして提案のチャンスを見つけたら、自社で提案するか否かを社内で吟味します。

え・・・?
せっかく顧客から提案依頼もらえたのだからすぐ提案すればいいのでは?

SIerは提案するか否かを非常に慎重に検討します。
安易に提案すると大変なことになるんです。

自社の関係者からは色んな観点で指摘が入ります。

営業部長

顧客の予算額は?いくら支払ってくれるの?

係長

当社が有力なの?当て馬じゃないの?

課長

顧客内ではその話はどこまで通ってるの?社長も認めているの?

SEリーダー

その提案依頼、断ったら何が不都合あるの?当社が提案する意味あるの?

・・・なんかネガティブな指摘多いですね・・・

今は深刻な人手不足です。
どの案件に会社として注力して提案するかは慎重な判断が必要です。
ある案件を提案する=今見えていない未来の他の案件を捨てるという機会損失がついて回ります。

また、安易に提案した結果プロジェクトが失敗して大赤字になったり損害賠償を受けるケースもあります。

SIerにとって、提案とはすごく慎重に進めるものなのです。

SIer営業として慣れてくると、提案を検討するために気を付けるべきポイント、ヒアリングしておくべきポイントを理解して動けるようになります。

いざ提案へ!提案プロジェクトマネージャーとの2人三脚

提案を社内検討するためには、顧客から情報を網羅的にヒアリングし、SIer営業が社内を説得します。

SIer営業

・・・以上が本案件に関してヒアリングしている内容です。
当社として提案する価値があると考えます。

SE課長

ふむ。そこまでヒアリングできているなら提案することを承認します。
田中さんを提案プロジェクトマネージャーとして割り当てるので提案を進めてください。

提案の作成状況は週次で報告するように。

提案する際には、提案内容の作成をとりしきるプロジェクトマネージャーが必要になります。

営業が提案するのではないの?

SIer営業は提案の技術的な内容に責任を持てません。
どのような技術を使って顧客の問題を解決するかは、提案プロジェクトマネージャーが考える内容です。

尚、ソリューション営業の場合は、仕様が決まっている製品の提案になるため、営業が提案プロジェクトマネージャーを兼任するケースもあります。
ソリューションの技術的な仕様を知っていれば営業でも提案内容を検討できるからです。

提案プロジェクトマネージャーは、提案を作るにあたってより細かい内容を顧客からヒアリングします。

この段階になると、ExcelシートでQA表を作って顧客へ事細かに確認するケースが多いです。

尚、提案プロジェクトマネージャーも技術的に全知全能なわけではありません。
自分だけでは、どんな提案内容にすべきか判断しきれない領域もあります。

各領域に詳しい社内の有識者も巻き込んで提案チームを作り、提案プロジェクトマネージャーが全体を取りまとめます

提案作成時、営業は情報収集活動に専念する

提案内容の具体的な作成は提案プロジェクトマネージャーの仕事です。

営業はこの間、提案作成状況を把握しつつ、案件を獲得するための情報収集活動をするケースが多いです。

SIer営業による情報収集活動の項目例
  • 他社の提案状況は?他社はいくらで提案している?
  • 提案を評価する顧客側のポイントは?その比重は?
  • 提案した後、顧客内では誰がどんな順番で提案内容を評価していく?それぞれの人物の意向は?
  • 今作成している当社の提案方針を一度説明して、ズレがないかフィードバックをもらえないか?

提案を作成するまでの間、多くの人が頭と手を動かし時間を使っています。

コスト換算すると提案活動だけで百万円以上のコストがかかっているケースもあります。

案件を獲得するために、できることは何でもやっておくのです。

尚、SIer営業が提案内容の作成に貢献することも可能です。
プロジェクトマネージャーやエンジニアに任せっきりにするのではなく、提案内容を細かく確認し、手助けして、提案内容を洗練させます。

提案内容が出来上がった!でも顧客への提案の前に最も大変な仕事がある・・・

顧客への度重なるヒアリングと提案チーム全員の頭脳労働によって出来上がった提案書。

いざ提案締め切り日前に顧客へ提出・プレゼンする前に、最大のイベントがあります

え・・・?最大のイベントは提案プレゼンでは?

提案プレゼンと同じくらい、もしくはそれ以上に大変なイベントがあります。
社内説明です

繰り返しになりますが、SIerにとって、提案とはすごく慎重に進めるものです。
安易に提案した結果プロジェクトが失敗して大赤字になったり損害賠償を受けるケースも少なくはありません。

会社として提案にGOサインを出してもらうために、社内の関係部署のマネージャー・責任者へ説明して回ります。

説明する相手の数は、提案金額に比例して増えます。
金額規模の大きい案件の場合、失敗した際のダメージも大きいからです。

例えば以下のような人たちに説明して回ります。

提案前の説明先 社内関係者 例
  • 技術部長
  • 営業部長
  • 法務部長
  • 財務部長
  • 経営企画部長
  • 担当役員・専務・常務
  • 社長

人数多い・・・
個別に説明して回るよりも全員が集まる会議とかで説明した方が効率良くないですか?

そのような会議に付議するケースもありますね。経営会議等。
でも、その場で説明していきなり全員から承認をもらうハードルは非常に高いのです。

各責任者が考える観点はそれぞれ異なります

技術部長

そのシステムを作り上げるのにその金額で本当に足りるの?
どんなリスクがあってどう対策するの?

営業部長

その提案金額で勝てるのか?
顧客側のキーマンとの関係性は?
決裁者の意向はヒアリングできているの?

財務部長

適正な利益を出せる算段はついているの?
失敗したらどうやって損失を補填するの?

法務部長

万が一トラブルになった際に当社が不利にならないような契約条件は勝ち取れるの?

短い会議の中で、関係者全員に100%納得してもらうことは非常に難しいです。

全員に承認をもらうために、事前にそれぞれの責任者に個別に説明して話を通しておくべきです。

根回しってやつですね・・・

説明をする際、各責任者が気にするポイントや性格を把握できていれば、承認をとりやすくなります。

尚、この説明の工程では「どうしたら当社のリスクを減らせるか?」と問われることが多く、提案金額を上乗せされることが予想されます。

技術部長

リスクはゼロではない。念のため提案金額には余裕を持たせよう
ヨシ、提案金額を1.5倍にするように。

SIer営業

(・・・そんな金額じゃ受注できないよ・・・)

失敗するリスクを回避するために、安全策をとるよう責任者から指示されることは多々あります。

しかし、『どれくらいの金額なら射程範囲内なのか』は、前線で顧客と接しているSIer営業の感覚が最も研ぎ澄まされています

誰かに指示された提案金額を鵜呑みにするのではなく、『案件をとるための提案金額』を社内説明し承認を勝ち取るのもSIer営業の重要な役割です

提案金額は複数パターンで承認をもらっておく

一度承認をもらった後、提案金額を変更する場合には再度関係者に説明して承認をもらわなければなりません。

その手間を削減するため、SIer営業は提案金額を複数パターン作って承認をもらっておくケースが多いです。

複数案の説明

提案金額は8,000万で提示します。
ただし、今後の競合との比較状況によっては、粗利率のボーダーラインを割らない提案額7,000万を下限の提案金額とさせてください

顧客へ提案!

社内承認をもらえたら顧客へ提案書を提出し説明します。

提案内容に対する評価・印象を確認するために、「提案プレゼンの場を設けさせてほしい」と打診します。
顧客から「プレゼンしてください」と要望されるケースもあります。

提案プレゼンは、社としての本気度を見せるためにも責任者を連れていき冒頭で挨拶します。

SIer責任者

この度はご提案の機会をいただきましてありがとうございます。
当社は…(会社のアピールや提案の意気込みを語ることが多い)

その後、提案プロジェクトマネージャーから具体的な提案内容のプレゼンをします。

SIer提案PM

それではご提案の内容について説明させていただきます。
ご提案書に記載のアジェンダをご覧ください。
・・・・

金額が大きな案件の場合、その場で即採用!と判断されることは少ないです。

顧客内での投資決済には社内会議にかける必要があるためです。

ただし、優秀な営業の場合は、事前に提案内容を顧客内の関係者へ説明しておき、最後に正式なプレゼンをして完璧に抑えるという鮮やかな提案をすることもあります。
むしろ本来SIer営業が目指すべき提案プレゼンはこのパターンです。

なんだか提案前に社内説明した時の根回しに似ていますね。

「根回し」と言うとネガティブな印象がありますが、言い換えると「複数の関係者との合意形成を進める」という非常に重要な仕事です。

また、複数の関係者にはそれぞれの考えがあります。
『関係者それぞれの考えを事前に情報収集・予測し、どのように働きかけたら合意してもらえるかを考えて実行に移す』という、難易度の高い仕事でもあります。

提案後は、自社を選んでもらうために営業が奮闘

提案後は、各社の提案内容が顧客内で比較され、どの提案を採用するか決定されます。

自社の提案内容の評価は?採用してもらえるのか?
SIer営業が顧客へ踏み込んで聞いて回ります。

提案した後は結果を待つだけじゃないのね。

ヒアリングの結果、足りていなかった要素や説明したけど伝わっていない内容があれば、内容を見直して再提案したり、再度説明することも多いです。

私の経験上、提案後、下記のような状況の場合は負ける可能性が極めて高いです。

負けが濃厚な状況
  • 顧客内の検討状況をヒアリングさせてもらう時間を顧客がとってくれない
  • 提案内容に関する質問等、顧客からの連絡が少ない

顧客側担当者は、採用する提案内容については今後社内に説明して、投資する決裁をとらなければなりません。

そのために必ず多くの質問を提案元のSIerに問い合わせるはずです。
意中の提案に対しては必然的に問い合tわせが増えます

一方で、採用する確度が低い提案には構っている時間はありません。

顧客から「今後御社の提案内容を社内で説明したいのですが・・・」といった相談を受領し、決裁をもらうためのシナリオを顧客の担当者と一緒に考える、という状況になると良い状態です。

契約書を回収するまで気は抜けない

「この内容ならいけそうです!是非これから宜しくお願いします!」と顧客から言われても気は抜けません。

契約書に印を押してもらわないと契約成立には至りません。

この際、契約書の内容について、顧客からかなり交渉が入ります。

有利な条件で契約したい顧客と、不利な条件で契約したくない自社の法務部門との調整をSIer営業が担います。

顧客側担当者

損害が発生した際の賠償額の記載は上限なしという記載に変えてください。

SIer
法務担当者

その要望は受け入れられません。

SIer営業はこの間を取り持ちます。

SIer営業が契約条件を調整する際の具体的な仕事 例
  • なぜ要望を受け入れられないか顧客に丁寧に説明する
  • 契約条文を変更したいという要望の背景を顧客からヒアリングし、社内の法務部門に伝える
  • 別の案なら受け入れる余地があるのか、譲歩余地を顧客担当者と法務部門それぞれに確認する
  • 譲歩できる余地を顧客へ小出しに伝えて、顧客担当者にも協力してもらえないか相談・交渉する

めんどくさ…

相手とこちらの法務で直接やりとりしてもらった方が早くないですか?

それでは互いの条件のぶつけ合いになってしまいます。
双方が納得できる結論を導くのもSIer営業の仕事です。

契約が完了しプロジェクト開始!対価を支払ってもらうまで責任を持つ

契約が締結されたらシステム導入のプロジェクトが始まります。
ここからはプロジェクトマネージャーが取り仕切っていきます。

契約をとるという営業のミッションは達成ですね。

はい。ただし、SIer営業のミッションは「契約をとる」だけではありません。

担当案件・プロジェクトが円滑に進行しているかを常に把握する必要があります。

案件・プロジェクトが問題なく完了して、会社への利益を確定させるところまでがSIer営業の役割です。

受注できたとしても、その後プロジェクト運営が難航して赤字になれば責任を問われるのはSIer営業です。

提案内容に記載してある業務を全て実施し、業務の完了(システムの納品)について顧客にOKをもらえたら請求書を出します。

そして期日通りに顧客からお金を振り込んでもらったら、営業の仕事は達成です。

尚、以上で紹介したシステム提案を同時に複数並行して進めることも珍しくありません

まとめ:SIer営業はシステム提案を通じて、問題解決の推進力が身につく

ここまで紹介した業務を日々実施していると自然とつくスキルがあります。

それは、複数の関係者と合意形成しながら、誰かの問題を解決する仕事を前に進めていく力です。

SIer営業の仕事の特性
  • SIerのビジネスは社内・社外と多くの関係者と合意をとりながら進めていく。
  • 技術的な対応、提案を作成する業務はエンジニアやプロジェクトマネージャーが取り仕切る。
    それ以外の業務は基本的に営業が取り仕切る。

→SIer営業は、複数の関係者と合意をとりながら進める業務を自然と実施していく

「調整力」と一言で片づけるにはもったいないくらい、色々やるんですね。

対応すべき問題は多岐にわたるため、中々大変な業務です。

でも、1つ1つの問題に対して、当事者意識を持って主体的に解決に取り組めば経験の幅はかなり広がります。

「複数の関係者と合意形成しながら、問題解決を推進していく」という経験は、SIerの外の世界でも評価されます。
SIer営業として経験が転職市場で評価された際の詳細については、以下の記事で紹介しています。

以上、私が10年間SIer営業として働く中で経験したシステム提案の詳細を解説しました。
SIer営業に興味を持っている人の参考になれば幸いです。

読んでいただきありがとうございました。